ピンサ・ロマーナの歴史

ピンサ・ロマーナ(イタリア語:PINSA ROMANA)は、イタリア・ローマの食品メーカーCorrado Di Marco S.r.l.社(以下、ディマルコ社)が独自に考案し、2001年に発表したものです。ピンサ・ロマーナのミックス粉には小麦粉のほか、大豆粉、米粉や乾燥マザー酵母などが使用されていますが、それぞれが、表面のクリスピーさ、生地のふわふわ感、発酵時にガスを閉じ込める生地の強さ、そして香り高い焼き上がりなどのために計算され、加工が施されたうえで配合されています。

ディマルコ社の創業者でもある現社長のコッラード氏は、もともとパン製造業を営む家系の出身で、病院の栄養士だった夫人との出会いから、ダイエット中の方や、子供、お年寄りまで楽しむことができて、消化に良いピッツァの開発に力を入れるようになっていったそうです。1981年の創業時から研究をつづけたコッラード氏が、2001年に市場に送り出したのがピンサ・ロマーナでした。ピンサ・ロマーナという名称は、ラテン語”pinsere”(生地を伸ばす・広げる)に由来し名づけられたもので、ピンサ(伸ばしたパン)・ロマーナ(ローマ風の)という意味を持っています。(※ピンサは古代ローマのパンという説明がされている場合がありますが、ラテン語に由来する名前から生じた誤解で、実際には現代の栄養学などに基づき独自に開発されたものです。)

もともとローマには、サクッとした触感の郷土独自のピッツァの文化があり、ピンサ・ロマーナはローマをはじめとしたイタリア中部を中心に徐々にファンを拡大していきました。2010年代に入ると特に、イタリアの各地方や、外国の様々な「郷土の食材」とも組み合わせやすい「ニュートラル」な生地であることや、健康志向への高まりとピンサ・ロマーナのアイデンティティがマッチしたことから、イタリア全土だけでなく、ヨーロッパ各国や、アメリカ、モスクワ、ドバイ、中国、タイなど海外でも、人気が広まり大きなブームを起こしています。

協会の発足とピンサの定義

ピンサ・ロマーナの人気が高まるにつれ、普通のピッツァに大豆粉や米粉をブレンドしただけのものを、「ピンサ」と呼び販売しているケースが散見されるようになりました。それを危惧したピンサ職人たちは、自らを「ピンサイオーロ」(ピンサの職人)と名乗り、真の正しいレシピ・発酵・焼成方法とピンサ・ロマーナのすばらしさを伝える活動を始めました。それが協会の活動のはじまりとなり、オリジナーレ・ピンサ・ロマーナ協会がローマに発足しました。

オリジナーレ・ピンサ・ロマーナ協会では、ピンサ・ロマーナの定義を下記のように定めています。

オリジナーレ・ピンサ・ロマーナ協会公式レシピ
水 ・・・ 1リットル
ピンサ・ロマーナ・ミックス粉 ・・・ 1,250 Kg -1,4 Kg
ドライイースト(季節で調整) ・・・ 2g〜6g
塩 ・・・ 20g~25g
エクストラバージンオリーブ油 ・・・ 15g~20g

また、ピンサ・ロマーナの製造にあたっては、ピッツァとは違い必ず守らなければいけない禁止事項があります。ピンサ・ロマーナの製造にあたり、ピンサ・ロマーナ独自の美味しさや軽さを再現するにあたり、非常に重要な項目です。

ピンサ・ロマーナ製造時の禁止事項
〇 麺棒の使用
〇 24時間未満の発酵時間
〇 ピンサ・ロマーナ粉以外の粉類の使用

日本オリジナーレ・ピンサ・ロマーナ協会においては、製造規格を遵守した製品だけに「ピンサ・ロマーナ」の名称(登録商標)の使用が許可され、また、正しい発酵や焼成の知識を身に着けたピンサイオーロ(ピンサ職人)が一丸となり、ピンサ・ロマーナに対する認知度向上のための活動を行っています。